自由な時間がたっぷりとあり,知的活動をする環境にも恵まれている大学に在籍しているのであれば,その恩恵を十分に享受すべきでしょう.第一歩は教養を身に付けることです.
ところで,「教養」とは何でしょうか? 大学の学問とは,このような問いから始まるのです.自発的な問いを立てられる能力.これこそが求められるのです.
大学生になるきみへ―知的空間入門 著者: 中山茂 大学での学問は,高校までの勉強とは異なり,自発的・内発的に行われるべきものであるという観点で書かれた本です.そうは言われても,大学入学まで受験勉強に明け暮れた生活習慣が容易に改められるはずもありません.そこで,学問とは何か,教養とは何か,仕事とは何か,などについて問い直してみる機会を与えてくれるのが本書であると言えるでしょう.特に,科学史を軸として,それらの話題を取り扱っているところが本書の特徴です.大学生になる際に,こういう類の本を1冊でも良いから読んでおいて欲しいと切に願います. |
エリートの反逆―現代民主主義の病い 著者: Christopher Lasch 現代社会が抱える問題,特に民主主義が機能不全に陥っている原因を,大衆の反逆としてではなく,エリートの反逆として捉えています.エリートが極めて自己中心的であること,歴史認識を欠いていること,マスメディアから垂れ流される情報によって大衆は議論する能力を奪われてきたことなどが問題点として指摘されています. 経済などのグローバル化に酔いしれ,ノーブレス・オブリージュを放棄して,民主主義や市民社会を腐食しつつある知識人および経営エリートへの痛烈な批判の書と言えるでしょう. 教育や宗教など話題は多岐にわたり,膨大な引用がなされており,非常に内容の濃い本です.このため,きちんと理解するのはかなり難しいですが,暇潰しとしてではなく,真剣に読むに値する内容です. |
職業としての学問 著者: Max Weber 第一次世界大戦後の混迷するドイツにおいて,マックス・ウェーバーは,当時ドイツ国内に蔓延していた風潮を批判し,「日々の仕事に帰れ」と青年たちを叱咤しました.そのときの講演内容が本書です. マックス・ウェーバーは,学問を職業とする人の心構えとして,学問分野の専門化に伴い,それぞれの専門分野に特化し,仕事に専心することが必要であると説いています.さらに,学問の意義そのものを見つめ直してもいます.これは1919年,彼の晩年の講演ですが,100年後の今なお色褪せてはいません. 大学で教職に奉ずる者には本来この類の見識が必要であると思うのですが,教員も学生もが大衆化した現在では望むべくもないことなのでしょうか. 学問をするための場である大学に在籍する者にとって,読んでおいて当然と言える古典でしょう.学問や研究を志すのであれば,是非とも読んでおいて下さい. |