学会発表に関するアドバイス(スライド作成編)

学会や講演会で良い発表をするための秘訣,特にパワーポイントなどでスライドを作成するときの注意点を紹介します.

大事なのは中身

まず確認しておきたいのは,最も大事なのは中身であるということです.学生の行動を見ていると,希にではありますが,それほど凝ったスライドを作成する暇があるなら,もうちょっと頭を使えよと言いたくなることがあります.良いスライドを準備することは大切ですが,本末転倒にならないように注意しましょう.

全体の構成

研究発表であるならば,スライドの構成は論文の構成と同じで良いでしょう.聴衆の立場になって,聴衆が無理なく理解できるような構成を考えましょう.自分が考えた順番で,あるいは自分が行動した順番で,スライドを構成する必要はありません.発表内容をアピールするのに適した構成を考えるべきです.

発表時間が非常に短い場合には必要ありませんが,発表に先立って,発表のアウトラインを手短に説明すると良いでしょう.もちろん,細々とした内容については一切触れる必要はありません.こういう順番で発表が進むんだなと聴衆が理解できれば十分です.

発表の最後は,結言(結論,まとめ),そして謝辞です.結言では,得られた成果を簡潔に示します.長い結言では,結局何が主張したかったのか分からなくなってしまいます.短くまとめましょう.発表の締め括りである謝辞では,お世話になった組織や人への感謝を述べます.研究発表であれば,資金援助をしてくれた組織や協力してくれた人達に謝辞を述べます.ただし,共著者(共同研究者)へ謝辞を述べてはいけません.共著者は,謝辞を述べる側であって,述べられる側ではありません.私の経験では,日本人は謝辞を疎かにする傾向があるような気がして仕方ありません.共著者ではない人が成果を得るのに多大な貢献をしてくれた場合には,きちんと謝辞を述べましょう.さらに,発表の最後には,発表を聞きに来てくれた聴衆に対しても感謝の言葉を述べるようにしましょう.

以上,構成についてまとめると,
(1)タイトル,発表者名など
(2)発表のアウトライン
    :
(N-1)結言
(N)謝辞
となります.

各スライドの作り方

各スライドには,簡潔なタイトルを付けるようにしましょう.一目で何について話しているかが分かるようにしておくべきです.

視覚的効果を高めるためには,文章よりは図表を利用した方が良いでしょう.スライド全面に細かい文字で文章が書かれていたら,多くの人は会場から逃げ出したくなります.それでも,文章を書かないわけにはいきません.結果をグラフで示す場合でも,そのグラフから導かれる結論を簡潔な文章でスライドに書いておくべきです.そのようにしておけば,聴衆が結論を聞き逃しても大丈夫です.また,グラフの横軸と縦軸の説明なども,はっきりと書くようにしましょう.説明がなくても,スライドだけを見れば発表内容を把握できるぐらいに,丁寧にスライドを作成しましょう.

とにかく,文字を書く場合には,大きな文字を使うべきです.例えば24ポイント以上というのが目安になるでしょう.聴衆が読めないような小さな文字で書いても,無意味です.むしろ,悪い印象を与えてしまうので,書かない方がましかもしれません.

カラフルなスライドを作成する場合には,文字と背景とのコントラストに注意して下さい.文字が濃い色ならば背景色は徹底的に薄く,文字が薄い色ならば背景色は徹底的に濃くしましょう.特に,パワーポイントを使用している場合は,白地に緑色の文字を書くときに注意が必要です.蛍光色のような緑色のため,非常に見辛くなります.背景にグラデーションを使うような場合には,細心の注意を払うべきです.文字が読めなかったら何の意味もないということを肝に銘じておいて下さい.発表本番前に,プロジェクターで投影し,映り具合を確認しなければなりません.パソコンのディスプレイとプロジェクターの投影画面では,随分と色合いが変わるものです.事前に必ずチェックして下さい.

アニメーション機能を利用する場合には,独り善がりにならないように気を付けて下さい.すべての箇条書きにアニメーション機能を利用する人もいますが,聴衆のことを考えているとは思えません.聴衆に対して自分の好みに従うように強制するのが良い発表ではありません.各スライドで伝えるべき内容を確実に伝えるにはどうすべきか,この点のみを意識して下さい.そうすれば,アニメーション機能なんてほとんど不要であることに気付くでしょう.

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